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海外・アジアで働く人々の就職体験談!連載企画『アジアで働く』

台湾で働く:藤澤 裕子さん(商社・バイヤー)

海外就職体験談 2019-12-13



オーストラリアでは就職が決まらず、台湾では入社半年でリストラ宣告。
さまざまなピンチを乗り越えて、たくましく今海外で生きている。

藤澤 裕子さん(37歳)



【プロフィール】1982年生まれ。日本の大手リサーチ会社で勤務後、オーストラリアへ留学。その後台湾に渡り、現在は原料の専門商社にてバイヤーとして活躍中。


「日本を出て、海外で働く人ってどんな人だろう?」
筆者の私は結婚がきっかけで、上海で生活することになりました。このコーナーでは、そんな海外生活初心者の私が、自分の意思で海外でのキャリアを創る方に、海外で働くきっかけ、またその魅力をお伺いします。



海外就職を実現させ、現在は台湾の商社で活躍されている藤澤さん。しかしこれまでの道のりにはいくつものピンチがありました。永住を夢見たオーストラリア生活や、はじめての台湾就職・入社半年での突然の解雇など、今にたどり着くまでの紆余曲折をお伺いしました。

***

「向いてない」と感じながらも必死で働いた20代。30歳を目前に海外に目を向け始めた。

   私は現在、台湾人オーナーの老舗専門商社に勤務しています。主に日本の健康食品原料や調味料の購買、新商品開拓を担当しています。日本のほか、欧米・中国・東南アジアの企業と取引があり、同僚が不在のときは私が代理で連絡を取ることもあります。台湾にいながら、たくさんの国の方とやりとりができるお仕事ですね。

今でこそ台湾で仕事をしていますが、最初から海外志向だったわけではありませんでした。

   新卒では、昔から憧れていた日本の大手リサーチ会社に入社しました。しかしいざ働いてみると、あまりこの仕事に向いていないことを早い段階で感じてしまいます。それでも、せっかく入れた会社なのだからと自分を鼓舞し、仕事に打ち込みました。リサーチの仕事が自分の長年やりたかった夢だったので、それを諦めるのも嫌だったし、他にやりたいことがなかったので続けられていたのだと思います。しかし、勤続年数や年齢を重ねるうちに将来のことを考えるようになり、人生のうちに一度は海外生活ができたらなと思うようになったのです。社会人になってから見つけた「やりたいこと」でした。



夢見たオーストラリアへの移住。踏み込んだからこそ見えた現実。

   そして30歳のとき、日本を出て、オーストラリアに留学することを決めました。オーストラリアを選んだのはそこに住む人々が「Go easy」精神を持ち、仕事や生活を楽しんでいるというイメージがあったからです。さまざまな人種の人がいる寛容な国で、自然も豊か。決して学歴社会ではなく、それぞれが専門性を強みにして仕事をしていることも魅力的でした。


オーストラリアの語学学校時代。様々な国籍の友人ができました。

   オーストラリアでは、現地の専門学校に通って英語と観光学を習得した後、就職するという計画でした。英語力は伸び、多くの友人もでき楽しい学生生活を過ごしましたが、景気の影響もあって就職先探しには苦戦しました。せっかくの観光学科での学びを活かせるところの求人もなかなか見つかりませんでした。

   また同じ頃、もともと抱いていたオーストラリアのイメージとは異なる現実を見聞きするようになっていました。オーストラリアはさまざまな人種や文化に対して寛容な場所だと思っていたのですが、友人との会話の中で、国籍が異なる人に対する差別意識を感じる発言を聞いてしまうことなどがありました。夢のような国はないとわかっていても、ここで生きていくことは簡単ではないかもしれないと思うようになっていったのです。

   仕事の種類を問わなければ、オーストラリアで何らかの仕事に就けたかも知れませんが、そこにいたいがために望まない仕事をするというのは違うなと思い、悩んだ末オーストラリアを出ることにしたのです。


様々な面が見えたオーストラリアでしたが、自然の中で過ごした穏やかな日々は素敵な思い出です。


資金ギリギリ!台湾の現地企業に入社し、日本にはない海外の厳しさを経験。

   オーストラリアを出たその足で台湾を訪れ、2か月滞在しました。実は、オーストラリアにいた頃、台湾人の友人ができたことがきっかけで、台湾に興味を持っていたのです。そして友人に「中国語ができると就職や仕事の武器になるよ」と聞いていたため、台湾の語学学校に通いました。資金はギリギリだったのに、よくこんなに行動できたなと自分でも思います(笑)。


台湾にて。笑顔とは裏腹に、先の見えない将来への不安でいっぱいでした。

   その後とうとう資金が尽きてしまったので、一旦日本に帰国。そして再度海外就職を目指すことにしました。せっかく学んだ中国語をもう少し伸ばしたかったので、台湾や中国大陸での就職を希望しました。当時、英語は問題なく使えたものの中国語は基礎会話レベルだったため就職先が見つかるのか不安でしたが、求人サイトを探し回った結果、日本語と英語ができれば良いという条件だった台湾の商社に入社することが決まりました。

   台湾人の社長が一人で立ち上げた商社にて、私は新商品のシリカという素材の市場調査と、日系企業向けの営業を任されました。前職のリサーチ業務とは一変して、まったく未経験の職種でしたが、毎日勉強と行動を続け、少しずつお客様との関係も築けるようになっていきました。

   しかし入社から数か月後、問題が起きます。販売していたシリカが粗悪品だったことが判明したのです。信頼してくださっていたお客様への対応で、もちろん売上どころではありませんでした。そんな中、営業成績が伸びないと指摘され、入社から半年ほど経った頃、いきなり「給料が払えない」と社長から退職勧告を受けたのです。突然のリストラ宣告に「これはおかしい」と思いましたが、精神的なショックが大きく、そのまま会社を退職することになりました。


日本の常識は通用しない。受け身の姿勢ではやっていけないと学んだ経験だった。

   実際、台湾では突然のリストラも退職金を出せば合法の範疇で、雇用契約書があっても役に立ちません。ただし私の状況の場合、弁護士に相談すると裁判を起こせば勝てるといわれましたが、自分自身の負担を考え、そのまま退職を決めました。今思うと、これが日本だったら行動を起こしていたかもしれませんが、当時台湾に来て1年足らず、知識や言葉の壁がある中でそこまでの自信はありませんでした。

   リストラ宣告を受け、しばらく落ち込んでいましたが、日本への帰国という選択肢はありませんでした。せっかく両親を説得し、大きな決心をして台湾に渡ったのだから、何もできていないまま帰るのは嫌だったのです。気持ちを切り替えて、自力で一から新しい仕事を探し始めました。

   その際の求職活動では、中国語は完璧ではなかったものの、わからないなりに気になることはすべて人事担当者に確認しました。前職での経験は必ず次の成功に活かさないと悔しいですからね。日系企業のようにきっちりしているところばかりではないので、受け身でなく能動的に理解しようとすることが大事だと思います。そうして、辿り着いたのが今の職場です。



様々なピンチを乗り越えて掴んだ、自分らしく働ける環境。

   今の原料商社の購買の仕事では、これまで台湾になかった新しい原料を海外から初めて持ち込み、それを台湾現地のお客様に取り入れてもらえたときが嬉しいですね。私が第一人者になったというやりがいを感じます。国境を越えて、台湾や日本に限らず、様々な国と関わりながら働けることも面白いと感じています。


社員同士でランチに行くことも。台湾料理の優しい味は日本人の舌にも合います。


   現職での労働環境を日本企業と比較すると、異なる点が多いですね。台湾に限ったことではないですが、外国人社員としての役割を求められるのでの仕事の範囲がはっきりしていて、意味のない仕事を押し付けられることもありません。かといって、日本ほど完璧主義的なところはないので気は楽ですし、休暇申請が却下されるということもありません。メリハリをつけて働ける環境が自分に合っています。

   日本を飛び出し、台湾に来てもうすぐ4年。様々なハプニングもありましたが、今ではこちらで結婚もし、すっかり生活に馴染んでいます。現時点で日本に帰ることは考えておらず、将来的には中国語や英語の通じる、東南アジアの国にも行けたら面白いなと思っています。きっとそこでもトラブルが起きるでしょうが、それも含めて楽しんでやろうと思います。



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ご自身の経験談を通して、これから海外就職をする方にトラブルから自分を守るきっかけになればとおっしゃっていた藤澤さん。「突然一方的に会社から退職勧告される」。こういった話は多くはありませんが、実際に起こりうることです。私ならすぐに日本に帰国してしまいそうですが、藤澤さんのように諦めずに行動し続けられる人が、どんな環境であっても生きていけるのだろうなと感じました。




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